Spirits Selection by CMB(スピリッツセレクション)とは? 日本の焼酎・泡盛が世界で評価される理由

2025年夏、鹿児島県の蒸留所で造られた一本の焼酎が、世界40カ国以上から集まった審査員全員の支持を得た。知覧Tea酎(Chiran Tea Chu)に授与された「レベレーション賞」は、通常、年間わずか10銘柄程度にしか与えられない、Spirits Selection(スピリッツセレクション)最高峰の栄誉である。

この受賞は、日本の伝統的蒸留酒にとって歴史的な瞬間であると同時に、国際的な品評会システムそのものの在り方を映し出す鏡でもある。

Spirits Selection by CMB(スピリッツセレクション)とは?

40カ国以上から集まる蒸留家、流通業者、ジャーナリスト、教育者たちは、それぞれ異なる味覚の文化的背景を持つ。それでも知覧Tea酎は全員の舌を納得させた。ここにSpirits Selectionが単なる賞レースではない理由がある。

レベレーション賞は各カテゴリーで1銘柄のみ、しかも「欠点がない」だけでは不十分だ。その製品は「そのスタイルと産地を完璧に表現した、ユニークで象徴的な存在」でなければならない。つまり、これは技術的卓越性と文化的アイデンティティの両立を求める賞なのだ。
「スタイルと産地を完璧に体現する酒」にだけ与えられる称号であり、カテゴリーの基準点(ベンチマーク)となる存在だという。

“It honours pure quality and authenticity.”
(それは純粋な品質と真のオーセンティシティを讃える賞です)

審査の仕組み──ブラインドテイスティングの厳格さ

Spirits Selectionの審査は徹底したブラインド方式で行われる。

「ボトルのラベルが美しいからといって、中身が優れているとは限らない。私たちが評価するのは、グラスの中にある真実だけです」と、主催者は語る。

この原則は、近年のスピリッツ市場において特に重要な意味を持つ。マーケティングが洗練され、ストーリーテリングが巧みになった現代、消費者はパッケージと物語に囲まれている。しかし品評会の役割は、その華やかな外装を剥ぎ取り本質的な品質を問うことにある。

さらにSpirits Selectionは独自の「スピリッツガイドライン」を開発した唯一の国際コンペティションだ。この包括的な参考資料は、審査員が世界中の多様なスピリッツを評価する際の共通言語となる。それぞれの伝統、製法、風土を理解した上で、その文脈における完成度を評価する──これが本来の意味での「国際的」な審査である。

審査の仕組み──ブラインドテイスティングの厳格さ

Spirits Selectionでは出品作の上位30%のみがメダルを獲得できる。裏を返せば、70%は賞を得られない。この比率は統計的に検証され厳格に維持されている。

「全員が勝者」という世界ではメダルの価値は希薄化する。Spirits Selectionが生産者や流通業者から信頼される理由は、まさにこの選別性にある。

メダルを獲得した製品は新たな輸出市場への扉を開く。それは品質保証であり、国際的な専門家集団による推薦状でもある。特に日本のような、海外市場での認知度がまだ発展途上にあるカテゴリーにとってこの効果は計り知れない。

日本の焼酎・泡盛が評価された理由

知覧Tea酎の受賞は偶然ではない。その背景には、日本の焼酎・泡盛業界における意識の変化がある。

2024年以前、Spirits Selectionへの日本からの出品は年間10銘柄未満だった。それが2024年には24銘柄、2025年には39銘柄へと急増した。この変化を主導したのは2024年に就任した現責任者だ。神戸で育った彼にとって、日本の蒸留・醸造文化を国際舞台で正当に代表することは、単なる業務ではなく誇りをかけた目標だという。

さらに日本の地元アンバサダーとの協力、関係機関との対話を通じて、焼酎と泡盛は国際品評会という舞台に本格的に参入し始めた。そして彼らは参加しただけでなく、複数のメダルを獲得することでその実力を証明した。

ここには興味深い対比がある。日本のウイスキーは過去数十年で神話的とも言える国際的地位を確立したが、同じ日本で何世紀も造られてきた焼酎と泡盛は、まだその恩恵を十分に受けていない。知覧Tea酎の受賞は、この不均衡が是正され始めたことを示す象徴なのかもしれない。

宮崎からの連続受賞──見過ごされた快挙

実は知覧Tea酎だけではない。2024年には宮崎の松露酒造による「Colorful」が同レベレーション賞を受賞している。同じく宮崎の古澤醸造は、2024年に「Mahoko」で金賞を受賞し、2025年には「Mahoko」と「Motoko」の2銘柄で銀賞に輝いた。

2025年にはさらに、奄美大島開運酒造の「紅さんご」と高橋商店の「繁桝粕とり焼酎」、ぶんご銘醸の「産声」が金賞を獲得。

忠孝酒造の「よっかこうじ」、三和酒類の「iichiko Special」、町田酒造の「里の曙GOLD」は銀賞を受賞している。沖縄の泡盛から九州本土の伝統的な粕取り焼酎まで、多様な製法とスタイルが国際的に評価されたことになる。

参照:Spirits Selection by CMB

わずか2年の間に九州から奄美諸島、沖縄にかけての蒸留所が、国際品評会の最高峰で連続して評価されているのだ。これは偶然ではなく、地域の蒸留技術の水準の高さと製法の多様性を物語っている。

ところが、この快挙は日本国内ではほとんど話題にならなかった。Spirits Selectionはヨーロッパでは広く認知されているが日本ではまだ馴染みが薄い。メディアの注目も限定的で一般には知らない賞のままだ。

この認識のギャップは示唆的だ。国際的な評価システムと国内市場の価値観が必ずしも連動していない。もしかしたら日本の焼酎文化は、まだ輸出される文化としての自己認識を十分に持っていないのかもしれない。

しかし逆に言えばこれは大きな可能性を秘めている。スピリッツセレクションに呼ばれる審査員たちが日本の蒸留酒を知り、学び、それが放射状に枝分かれし、真の意味で各国へ知れ渡った際の影響は計り知れない。

品評会が地域にもたらす影響とは

「単一のブランドから来るストーリーはマーケティングだが、地域から来るストーリーは文化遺産だ」と責任者は言う。これはSpirits Selectionの存在意義を端的に表している。

品評会は3〜4日間にわたり約150人の専門家を一堂に集める。彼らはテイスティングし、議論し、そして開催地の伝統を直接体験する。審査員たちは帰国後、自分たちが発見したものの「大使」となる。この影響は広告費では賄えない類のものだ。それはオーガニックで信頼性があり持続的なのである。

Spirits Selectionはこれまで中国、メキシコ、そして近くはマデイラで開催され、毎回その土地の蒸留文化に永続的な影響を与えてきて、これからもそうなる。

責任者の夢はいつか日本で品評会を開催することだという。「日本は世界で最も多様性に富み、インスピレーションを与える生産国の一つとして認識されるべきです。そのためには、日本の生産者からのさらに強力な参加が必要です。彼らがこのコンペティションの真価を理解し、体験してもらうために」

パンデミック前、Spirits Selectionには日本酒に特化した「Sake Selection」も存在した。ロックダウンによって中断されたこの試みを、いつか再開できることを彼は希望しているという。

今後の展望──日本開催の可能性も

知覧Tea酎のレベレーション賞受賞が意味するのは、一本の焼酎の勝利だけではない。それは透明性のある評価システムの勝利であり、文化的多様性を尊重する審査哲学の勝利であり、そして何より、誠実な職人技が正当に報われうることの証明である

 “In the Far East, Japan continues its progression with refined shochus (including the Revelation Honkaku Shochu) and other traditional spirits increasingly appealing to international juries.”
(極東では、日本が引き続き前進を続けており、洗練された焼酎(Revelation 本格焼酎を含む)やその他の伝統的なスピリッツが、国際的な審査員たちからますます高い評価を得ている)
公式サイト”Results of the 27th Spirits Selection by CMB: Global Trends in Spirits Unveiled in Jaliscoより”抜粋

国際品評会の真価はグラスの中にある。華やかなセレモニーでも、メディア露出でもなく、試飲室で多様な背景を持つ専門家たちが一つの液体に向き合うその瞬間にある。

知覧Tea酎はその瞬間に何を語ったのだろうか。それは審査員たちだけが知っている。私たちに示されるのは、結果としての満場一致という事実だけだ。しかしその事実の重みは、数字やトロフィーをはるかに超えている。


受賞酒造コメント

知覧醸造 森暢(のびる)氏
Chiran Tea Chu 2025年受賞

「この度は「知覧Tea酎」が栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。麹菌を用いた日本の伝統的酒造りが2024年12月ユネスコ無形文化遺産に登録され世界の人々に日本の焼酎を知っていただけるきっかけになればと思います。」

古澤醸造 古澤昌子氏
Mahoko/Motoko 2024年・2025年受賞
「CMB Spirits Selection 2025にMAHOKOとMOTOKOが入賞いたしました。昨年の金賞に続き入賞できたことは弊社にとりまして名誉なことです。
弊社は創業より百有余年の歴史の中で熊本国税局鑑評会など国内の鑑評会では一定の評価をいただいております。昨年よりCMB Spirits Selectionへの出品をさせていただきました。国際コンペへの出品は初めてです。そのような中で栄誉あるメダルにて評価をいただけたことはうれしい限りです。
小さな町の小さな蔵ですが地方ならではの地の利を生かし一本一本丁寧に醸しております。蔵の中でゆっくりと熟成させた本格焼酎です。悠久の時の中で育まれたMAHOKO,MOTOKOを評価いただき感謝申し上げます。10月から秋の仕込みに入りました。受賞の連絡に接し仕込みにも気合が入ります。より良い本格焼酎を醸すべく生産農家さんと手を携えて丁寧に仕込んでまいります。
今後とも応援の程よろしくお願いいたします。」


参考リンク: Spirits Selectionの詳細な受賞結果や審査基準については、CMB(Concours Mondial de Bruxelles)の公式ウェブサイトで確認できる。日本ではまだ認知度が低いこの品評会だが、世界のスピリッツ業界における影響力を知れば、見方が変わるはずだ。

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